Beranda / BL / 魔女ドーラの孫(仮) / アウルム地方 Ⅰ

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アウルム地方 Ⅰ

Penulis: エチカ
last update Tanggal publikasi: 2026-04-06 06:45:13

 アウルム地方にあるサリバン公爵家の別荘へ来て一週間が過ぎようとしていた。

 気候の良いアウルムではもう、雪の残る所はなく、芽吹いた若い緑が眩しい程だ。

 オルタナの為に用意された特別な部屋とは、薬草に関する書籍や古文書が所狭しと並ぶ一室だった。

 拘束も解かれその部屋を私室として与えられ、普通に暮らしていた。

 そう、普通だ。

「いや、おかしいだろ……」

 目が覚めていつも思う。

 ここで何をしているのだろうか?

 この先、自分の身がどう扱われるのかも分からないのに、呑気に寝ている場合か、と。

 だが、そのオルタナの心配を余所に公爵は休暇を楽しむべくのんびりと過ごしており、部下達も庭で稽古したり談話室で喋っていたり、と何の緊迫感も漂わせることはなかった。

 時折、部下であるノエルやミレーが不在だったりはするが、果たしていつまでこんな状況なのかと不安を覚える。

 オルタナは食事に呼ばれる以外、する事もないので部屋に置いてある本を片っ端から読んで時間を潰す。

 そもそもついた初日の晩ですら、今思えば揶揄われたに過ぎなかった。

「な、何の御用ですか?」

 湯浴みを済ませ夜も更けようかという頃に、公爵が一人でオルタナの部屋を訪ねて来たのだ。

 ベッタリ張り付いているはずの部下二人はどこへ行ったのか。

「話がある。入れてくれ」

「……どうぞ」

 薄い夜着を羽織っただけの公爵は、巷の淑女が見れば垂涎物の色気を垂れ流していたし、発情しない自分でさえ体が熱を持った様に感じる程だった。

 何だか見てはいけないものが目の前にある感じで、視線の先が定まらない。

「こんなに簡単にαを部屋に入れて、危機感がなさすぎやしないか?」

「はっ?」

「お前は発情した事が無いらしいが、一応Ωなんだろう?」

 オルタナは近づいて来た公爵に顔を寄せられ、目のやり場に困って顔を背けた。

「チッ……チンクシャな子供には欲情しないとおっしゃっ……た」

「まぁ、しないな」

 近い。

 今更だが、自分も夜着一枚の心許ない格好をしていたと気付く。

 はだけそうになる胸元に長い指をかけられて、顔を寄せられるだけで微動だに出来なくなる。

 威嚇グレアされているわけでもないのに、ここまで威圧感を感じるものなのか、と初めての感覚に困惑した。

「まぁ、そう怖がるな」

「こ、怖くは……ありません」

「そうか」

 少し、嬉しそうに見えた。気のせいかもしれないけれど。

「お、お話とは何でしょうか?」

「お前、この古文書読めるのか?」

 ベッドの縁に腰かけた公爵は、枕元に伏せて置いた読みかけの古文書を手に取り、そう聞いた。

「まぁ、分からない所もありますが、ある程度は……」

「博学だな。どこで覚えた?」

「……祖母が」

「ふぅん。他には? どんな事を教えられた?」

 これは尋問なんだろうか? 素直に答えて、大丈夫か?

 公爵が殺していないと言った自分の言葉を、どこまで信じているかなんて、未だに分からない。

 ただ、こんな立派な部屋を与えて拘束すら解いて自由にさせていると言う現実だけが、疑いは晴れたと思わせるだけだ。

 でも、彼は「お前を信じない事にしよう」そう言っていた。

「そんなに怯えるな。別に尋問しているつもりはない」

「……お、怯えてなんか」

「こっちへ来なさい。モリガン程ではないが、ここも夜はまだ冷える」

 公爵は腰かけたその隣に来い、と片手でベッドを叩く。

 意識するな。

 発情しないんだから、間違いなんて起きない。

 欲情しないって言われたじゃないか。

 自意識過剰だ。

 オルタナはそう自分に言い聞かせて、公爵の隣に躊躇いがちに腰かけた。

「ぶっ……学習しないな。安易に誘いに乗るなと言ったばかりなのに」

「へっ?」

「ふははっ、警戒心がないにも程があるだろ」

「何、言って……」

「そんなに無防備では、悪いαに食べられてしまうぞ」

 腰に回された手が熱い。

 公爵の近づいた顔は、気のせいでなければ楽しそうに見える。

 顔が熱い。

 頬に触れる公爵の黒髪が触れてはいけないものの様に感じて、仰け反ってしまう。

 オルタナは反射的に片手で公爵の胸元を押し返した。

 その手を公爵にいとも容易く取られて、唖然と口を開けた。

「自ら肌に触れるとは、誘っているのか?」

「ちっ違います! はっ……離してっ……」

「細い手首だ。庇護欲をそそられるな」

 そう言って公爵は掴んだ手首に唇を押し当てる。

 オルタナは何が起こっているのか分からないまま口が開いたままな事に気付いて、慌てて口を閉じた。

 口の端に力を込めて、漠然と気を抜かない様に自分を戒める。

 驚く暇があったら、状況を――。

 祖母の教えをまるで呪文のように脳内で再生するが、把握できるはずもなかった。

 人と触れ合う事を避けて来た。

 誰とも肌を重ねた事はないし、こんな無防備な格好で誰かに腰を抱かれた事もない。

「キスの経験は?」

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